公開日:2022/03/17              
         
高気密高断熱の住宅の特徴は?仕組みについても紹介!

注文住宅を建てる際「高気密・高断熱住宅」という言葉を聞くことがあるのではないでしょうか。近年、注目度が高まっている高気密高断熱住宅について、興味をもっている人も中にはいるでしょう。そこでこの記事では、高気密高断熱の住宅とはどのような特徴をもっており、どのようなメリット・デメリットがあるのか解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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この記事の監修者 石橋優介(建築家)

1984 広島生まれ
2009 広島大学大学院社会環境システム専攻 修士課程修了(建築意匠学研究室)
2009-2012 株式会社plus’d,architect 一級建築士事務所
2012-2015 株式会社鳳建築設計事務所
2015-2019 株式会社あい設計
2019~   石橋優介建築設計事務所

高気密高断熱の住宅とは?

高気密の住宅とは簡単にいうと「隙間の少ない家」です。古い木造住宅などでは、窓やドアなどの建具まわりや壁や床などに見えない隙間があり、そこから空気が出入りしています。気密性能の高い家は、気密性を高める断熱材や隙間を作らない窓やドアを使って建てられており、隙間が少ないので冬は冷気が入りにくく、冷暖房の冷たい空気や暖かい空気も外に逃げにくくなります。

住宅の気密性は「C値」という数値で表されます。平方センチメートル/平方メートルで表され、一平方メートルあたりの隙間の量を示しているようです。C値が低いほど気密性が高く、一般的にC値が1以下の住宅は高気密住宅といわれています。高断熱住宅とは、ひと言で説明すると「熱を伝えにくい家」です。断熱材や断熱性能の高い建具を使うことで夏は外からの熱をカットし、冬は室内の熱を外に逃がしにくくすることを可能としています。

高断熱住宅には大きく分けて「内断熱工法」と「外断熱工法」の2種類の工法があります。内断熱工法は外壁と内壁の間に断熱材を敷き詰める工法で、外断熱工法は住宅全体を床や屋根も含めてすっぽりと覆う工法です。外断熱工法のほうが内断熱工法よりも熱を逃がしにくく気密性を高められ、壁内結露も起きにくいのですが施工に手間がかかるため、工事費用は内断熱工法よりも高めです。また、両方の工法を組み合わせた「ダブル断熱」を採用している工務店もあります。

建築会社を選ぶ際は、断熱にどの工法を採用しているかもチェックしてみるとよいでしょう。断熱性能は「UA値」「Q値」で表されます。UA値は建物の熱損失を外皮表面積で割って算出し、Q値は建物の熱損失と換気の熱損失の和を延床面積で割って算出します。

最新の省エネ基準である「改正省エネ基準」ではUA値を指標としています。しかし、UA値は「外皮表面積=壁、屋根、窓、床等の断熱材の評価」であり、換気による熱損失を含まないので、Q値のほうが建物内部の住環境に合った数値になるでしょう。Q値は単純な形状の建物だと低くなるため、ハウスメーカーによっては単純な形状のモデルハウスのQ値を、自社のQ値として表示しているケースもあります。家を建てる際はUA値とQ値どちらも参考にしましょう。

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石橋優介

私自身も、私は設計内容やデザインなどはもちろんこだわりますが、建物の断熱性能に非常にこだわった設計をしています。
UA値(外皮平均熱貫流率)が0.87以下、ηAC値(平均日射取得率(冷房期))が3.0以下の設計は基本としていますが、優先的に断熱性能を上げるようにしています。

高気密高断熱の住宅を建てるメリット

高気密高断熱住宅のメリットは快適さでしょう。夏は暑くなりにくく、冬は寒くなりにくいため、1年を通して快適に過ごせます。冷暖房効率がよいため、室内を適温に保つために必要な冷暖房器具の利用量を減らすことができ、冷暖房費を抑えられるというコスト面でのメリットもあるのです。

また、部屋ごとの温度差が少なくなるので、冬場に居室は暖かいけれど廊下や浴室は寒いというケースが減ります。温度差による体への負担を減らすことで、ヒートショックのリスクも軽減させられます。高気密高断熱住宅は隙間が少なく、断熱材は音を吸収するため遮音性能も高い住宅を実現することが可能です。音を気にせずに暮らせる点も暮らしやすさにつながるメリットといえます。

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石橋優介

多くのハウスメーカーや工務店等のビルダーでは、高気密高断熱はもはや標準的な仕様となっています。
サッシや外壁、断熱材等の仕様を向上させると、建設コストが大きくなるというデメリットはあります。しかし、高気密高断熱の住宅を建てることは、冷暖房負荷を抑え、毎月の光熱費の縮減につながるため、35年以上暮らすという長い目で見て、経済的にメリットがあると言えると思います。

高気密高断熱の住宅を建てるデメリット

高気密高断熱住宅を建てるデメリットとしては、建設コストがかかることが挙げられます。高気密高断熱住宅を建てるには綿密な設計や施工が必要で、性能のよい断熱材や建具は比較的割高なため建築費は高くなるのです。ただし、その後の冷暖房費といったランニングコストを下げることができるため、コストについてはトータルで考えるとよいでしょう。

また高気密高断熱の住宅は、結露が生じやすいというデメリットがあります。内部結露が発生すると柱や梁といった構造材の腐食につながり、住宅の寿命を縮めたりカビによる健康被害の原因となったりするようです。内部結露を防ぐため、高気密住宅では窓を開けなくても空気の入れ替えができる24時間換気システムの設置が義務づけられています。そのため高気密高断熱住宅を検討する際は、換気システムについても確認を忘れないようにしましょう。

防湿効果の高い断熱材を使った外部断熱も、内部結露対策として効果的です。また高気密高断熱住宅では、石油ストーブなどの開放型暖房機は一酸化炭素中毒になる恐れがあるため使用が制限されます。窓を開けていればそのような暖房器具も使えますが、高気密高断熱の家であれば、暖房器具はエアコンや床暖房を選ぶことをおすすめします。

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石橋優介

一般的に、断熱性能を向上させると(断熱等級なしから断熱等級5を目安にすると)建設費は7~10パーセント程度高くなります。
しかし、その上がった建設費は、外構費や内装費、照明器具等のVE(仕様の性能は落ちないがコストは落ちる検討)により全体で予算内に収まるようにビルダーと協議をするとよいでしょう。
「コストが高くなるから厳しいですねー」と済まさせるビルダーより、高気密高断熱化を実現しながらコスト調整を行ってくれるビルダーを選びましょう。

注文住宅を建てる際には、高気密高断熱住宅の特徴を理解したうえで、C値、UA値、Q値といった気密性・断熱性を示す数値も参考に施工会社を選ぶことで、満足のいく家づくりにつなげていきましょう。

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